自己紹介とお店の紹介をお願いします。
祖父母が山梨県からこの静岡県に来てお菓子屋を創業したのは昭和10年です。
それから昭和33年に富士製パン株式会社と社名を改めてから今年で設立50周年になります。
私で創業から三代目になります。学生の時からクリスマスにケーキ作りの手伝いはしていましたが、
本格的に始めたのは、大学を卒業してから学んだ専門学校での洋菓子作りです。
その後企業のベーカリ部門の研究室で2年間パン作りの技術を培いました。
現在富士製パンではパンの製造、卸、販売をしています。多くは学校給食と卸販売です。
卸先は病院、介護施設、幼稚園、高校、企業になります。
その他工場内にある直営店でもパンを販売しています。
ほとんどが学校給食と卸販売とのことですが、一日の生産量はどのくらいですか? また、卸先ごとの特徴はありますか?
一日約2万個のパンを製造しています。工場の稼働が10時間くらいなので、1時間に2千個のパンを作っています。
製造するパンのうち7割が学校給食です。
パンの種類はオーソドックスなあんパン、クリームパン、ジャムパンが中心ですので、特に卸先で変えるということはありませんが、
幼稚園にはアレルギ対策として卵を使わないパンも卸しています。
高校では月に1度ミルフィーユデーとしてミルフィーユパンを販売していますが、
100個のパンが完売してしまうほど人気があります。
宅配便の事業所にあるパンの自動販売機にも卸しています。
袋から出せばいつでもすぐ食べられるパンは、ドライバさんにとって便利なようです。
特色があるパンに「ようかんパン」がありますが、お客様の反応はいかがですか?
珍しいので手土産としてようかんパンを2、30個買われるお客様もいらっしゃいます。
ようかんパンは静岡県だけで作られていると聞いています。
昔、チョコレートが手に入りづらかった時に、パン屋さんでも普段使っていた餡をようかんにして、
それを溶かしてあんパンに塗るのがこの辺りに広まったようです。
作る手間が掛かるので、今はここでしか作っていません。
富士市で特色がある商品として「富士ブランド」にも認定されています。
パンの中心に噴火口に見立てた穴を開け、そこにバタークリームを入れますので、
パン、和菓子、洋菓子が一体となった風味を楽しめます。
あまり多くは作れませんが、年に数回ある地元の物産展や直営店で販売しています。
パン作りでのこだわりを教えてください。
イーストを予備発酵させる製法をとっています。
中種法でもストレート法でもただイーストを混ぜるのではなく、処理に予備発酵という工程を入れています。
イーストを溶かして30分から数時間置いて一度発酵させます。
業者から仕入れたイーストもすぐには使わず、24時間以上7~8度に温度管理されたイースト専門の冷蔵庫で良い環境にリセットさせます。
予備発酵の工程を入れると風味はもちろん、火通りが良くなって焼き色が明るい茶色に仕上がります。
食パンを切った断面を見ると、発酵でパン生地が膨む時の過発酵でできるパンの耳の内側で目が詰まったグレーっぽい層があります。
この部分は時間が経つと硬くなります。それが予備発酵をすることでなくなります。
この製法は学校給食用パン実技研修会で教えていただいたのですが、本当に驚きました。
学校給食のパンには余分な原材料は入れられないので、基本的な配合で美味しいパンを作る工夫をしています。
耳まで美味しいパンは中身も美味しい。子供たちに耳まで柔らかくて美味しいパンを食べてもらいたいです。
最近食料自給率の問題が話題になりますが、廃棄される食料の多さも気になります。
美味しいものを作って100%食べてもらう、それが究極のリサイクルだと思います。
学校給食に関わっているのでそういう事も考えています。
使われ始めて1年ほどになるベルトドライブプルーファ(PQB)について感想を聞かせてください。
中間発酵はパンの製法として必要だと考えています。今も昔もパンの製法は変わりません。
パン生地は生き物ですから、ガス抜きでいい空気と入れ替わって成長する過程で良い状態になっていきます。
それがパンの特性で、その中間発酵の工程を担っているのがベルトドライブプルーファです。
異物混入に関してベルトドライブプルーファはゼロだと思います。
チェーンなどで擦れる部分の掃除をしても受け皿のトレーに出てくるものはありません。
他の部分も、稼動前には必ず1周以上空回し運転をしますが、その時も落ちてくるのはパンの粉だけです。
機械が稼動している時もとても静かで、本体部分もスケルトンになったので圧迫感がなく工場内が明るくなりました。
スケルトンだと機械が動いてパンを作っている様子も見えるので、工場に来られた業者さんの目にも止まるようです。
掃除もしやすく、使い勝手がいいので満足しています。
ベルトドライブプルーファの他に導入されている分割機、丸め機についてはいかがですか?
分割機も最近新しくしましたが、掃除のしやすさと、操作性が上がったのを感じます。
機械のトラブルの心配も少なくなって、特に使い始めにコンベヤベルトが緩むトラブルがなくなりました。
大きな調整もなく使っています。
性能では、生地にストレスなく分割できているのがいいです。
食パンから分割重量が27gと小さな生地まで分割できます。分割した表面もしっかりきれいに仕上がっています。
定期的に掃除を行っていますが、カバーがスケルトンで汚れが一目で分かるので衛生的に使えます。
丸め機はしっかり丸めができて、薄皮もきちんとできるのがいいですね。
トラフ(生地の走路)が上がる設計で掃除がとてもしやすいです。
衛生面で気を使われていることはありますか?
同じパン生地でも煉り込みが違うものが混ざってしまうと異物混入になってしまうので気を使います。
工場内で着る白衣も最新のものにしています。異物混入を防ぐ設計で、機能性も良いものにしました。
工場の床も塗り替えて、異物混入に繋がるものは極力なくしました。
使っている機械も掃除がしやすくなって衛生的です。
今、食品の安全性が問題になっていますが、食の安全は当然守るべきことです。
地味だけどまじめにやっていれば支持されると思います。常にまじめに物を作ることを心掛けています。
最後に、今後の抱負を教えてください。
美味しさを追求しながら、地元で必要とされる企業でありたいと思っています。
大きなことはせず、コツコツまじめにやっていきたいです。
それでもパン作りは日々、気温と湿度が違えば出来てくるものも変わります。
そういった意味では毎日が新しいことの連続です。
その中で美味しさを見出せれば、結果は自然についてくると思います。
それから学校給食に携わっているので、給食を通して食の大切さを伝えて行きたいです。
子供たちにパンの美味しさを知ってもらって親しんでもらいたいです。
職人としては発酵をアピールして、これからも益々パン業界全体が発展していければと考えています。